最近本を読む機会がめっきり減ってしまったので、忘備録的に。
2016年7月26日、朝TVを付けたら事件の中継をしていて、映し出されるたくさんの救急車・パトカーに子どもが大興奮していたこと(ちょうどはたらくクルマ好き期)を印象深く覚えています。その時は、事件の凄惨さや、犯人の思想の過激さ、社会のモラルとしての建前と誰しもの心の中にある差別につながる意識との葛藤に胸がザワザワしたものの、時と共にあの衝撃も遠い記憶となり、正直自分の関心も薄れてきていました。
2020年に入り、初公判で被告が自らの小指を噛み切ろうとし退廷、被告不在のまま冒頭陳述が行われるなどまたセンセーショナルなニュースとして報じられました。公判がすすみ、改めて被告の思想の異常性にゾッとし、被害にあわれた方とご家族の肉感のあるエピソードが明らかになりやるせ無い気持ちになりましたが、3月に新型コロナウイルス感染症の流行の裏で、判決が出たのを自分としては予想よりあっけなく感じました。
改めて今回朝日新聞社取材班のまとめた本書を読み、最も心に残ったのはまえがきでも触れられている箇所で、判決文の「動機の形成過程は明確であって病的な飛躍はなく、了解可能なものである」という一文でした。刑事責任能力に問題なかったとして死刑を求刑するのだから尤もなのですが、結果的に障害者に対するヘイトクライム、テロ的行為に至る過程に対し、一種、理解を示すかのような印象を与える言い回しであり、違和感を禁じ得ませんでした。違和感と言っても、もちろん頭ではわかっているけれども…、ただ胸の辺りに気味の悪いモヤモヤを抱えたまま、そっと本を閉じました。
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この事件については、一生モヤモヤを抱えながら生きていくことになると思う。
社会全体でも折に触れ事件の記憶を思い出し、語り継ぎ、向き合い、考え続けていかなければいけない。
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